名前こそオートトプコール(Auto Topcor)58mmF1.4となってはいるが、自分が使用したのは2003年12月にコシナから限定発売されたレンズだ。ニコンFマウント(Ai-s)とM42マウントが、それぞれ800本ずつ生産されたそうだが、好事家の人気を博して発売直後に完売してしまい、現在では結構なプレミア価格で取引されているとも聞く。
名前のほか、外観も往年の東京光学の同名レンズを模しているため、発売に際しては復刻版とうたっていたが、光学設計はコシナ独自のものとして一新されている。製品名と外観を使用するため、コシナは東京光学より商標権と意匠権の使用許諾を得たそうだが、光学設計に関する情報については提供されたかどうかよくわからない。ただ、たとえ詳細な技術情報を提供されたとしても、当時と現在とでは硝材が異なっているため、いずれにせよ完全復刻は不可能だっただろう。
それに、肝心のオートトプコール58mmF1.4にしても、実は
発色やボケ味に問題があるとの声があり、さらに旧レンズは単層コーティングという弱点があった。そういった事情を考慮すれば、新たな光学設計で性能面をリファインすることは、むしろ好ましい決断だったといえるだろう。
ただ、現代的なリファインという要素は、販売要素として微妙だったようで、コシナのアナウンスも「復刻」を強調していた。
さて、肝心の描写性能なのだが、過剰な期待は裏切られるものの、十分に水準以上というところなので、率直に言って面白みにはかけるかもしれない。確かに、開放ではいかにもなボケが楽しめるし、絞るとぐんぐんシャープになる。
ただ、そうは言っても十分に素直な描写傾向だし、開放域でも合焦部はシャープなので、使いこなすのが大変というほどではない。
多分、似たような条件でまとめて36~72カットも撮影すれば、レンズの特徴を把握するのもそれほど困難ではないはずだ。問題は大きさと焦点距離で、やはり標準レンズとしてはいささか長く、また特徴的な白鏡胴はデザイン的にボディを選ぶ。まぁ、そんなことをいってしまうと、復刻版の意味もなくなるのだけどね。
大柄なレンズなので、バランス的にはF4かF5がよいのだが、個人的にはいささか微妙ではないかと思う。あくまでも主観の問題なのは十分に承知しているが、やはりF2の白あたりがお似合いのではないかと思うところだ。
まぁ、描写傾向については自分がこんなところでぐだぐだ言うより、こちらの「
試写レポ」をチェックしていただいたほうが手っ取り早いし、なにより画像できっちり比較できるのだが、普通によく写るレンズなのだ。
ただ、品数が少ない中をあれこれ捜し求めて、プレミア価格で入手する価値があるかどうかとなると、正直言っていささか疑問とせざるを得ない。あまり夢のないことを言いたくないのだが、フツーに50mmの中古ニッコールを手に入れて、オーバーホールとピント調整したほうが安いし、同じコシナ製だがプラナーT*50mmF1.4ZFという選択肢もあり、これらは描写的にもそれほどの差が出ない。
個人的には、落ち着いた雰囲気のポートレートに最適と思うが、自分は風景撮影がメインなので出番があまりない。ただ、なんだかんだいっても大口径レンズなので、夜景撮影に威力を発揮するやも知れず、まだしばらくは手元においているだろう。
追記:2007年11月3日 フォクトレンダーNOKTON 58mm F1.4 SLIIについて
エントリーを投稿した直後にコシナからアナウンスがあり、限定復刻生産品だったTopcor58mmF1.4は、光学系をそのままにNOKTONとして再生産されることが決定された。まず11月17日にニコンAi-Sマウントが発売されるが、これはCPU内蔵レンズであり、デジタル1眼レフの機能がほとんど使えるほか、スピードライトの調光精度も飛躍的に向上する。
ニコンAi-Sマウントのほかは、ペンタックスKAマウントの発売が予定されており、こちらもデジタル1眼レフの機能を活かす電気接点が設けられている。
鏡胴のデザインは一新され、黒塗りの落ち着いたものとなるようだ。光学系は同一なので、描写性能は限定品と同等なのだが、なんといってもCPU内蔵というのは大きな改良点だろう。特にAPS-Cサイズのセンサを持つデジカメの場合、35ミリフルサイズ換算の焦点距離が85~87ミリとなるため、ポートレートレンズとして人気を集めるかもしれない。また、その場合はスピードライトの調光精度が重要になるため、今回の改良を歓迎するユーザは少なくないだろう。
いずれにしても、限定生産ではなく通常品として生産されることはすばらしく、コシナの姿勢を高く評価したい。
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テーマ:★カメラ&レンズ・機材 - ジャンル:写真
- 2007/10/29(月) 21:02:14|
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