ローデンストック(Rodenstock)の低価格レンズで、欧米ではトヨのフィールドやビューカメラ、あるいは廉価な木製カメラとセット販売されていたため、入門者を中心に多くのユーザーが存在している。ただ、日本では代理店が取り扱わなかったため、並行輸入品か個人輸入品が少々出回ったのみで、中古の玉数もさほど多くない。そのためか、Geronarのカタカナ表記もジェロナーとゲロナーの2種類が混在しており、WEBで検索する際も英文表記の方がヒットしやすい。
このレンズにおける最大の特徴はその構成にあり、なんと「3群3枚」という正真正銘のトリプレットなのだ。おまけにマルチコーティングが施されているため、ヌケのよさという点ではほとんど最強のレンズだったといえよう。
描写は比較的ソフトだが、ローデンストック製品としては平均よりやや甘い程度のコントラストだろう。ただ、ニッコールに比べればシュナイダーも「甘め」だから、この辺はいわゆるヨーロピアンな「味」なのかもしれない。ともあれ、レンズ構成がトリプレットだからといって、描写も古典的なものを期待するのであれば、その期待が完全に裏切られるのは間違いなく、まっとうに普通の低価格製品と観てよいだろう。
問題はレンズ口径が小さくて暗い割りにイメージサークルが小さいことで、焦点距離150mmでも180mmしかないのだから、ほとんどあおれないと考えてよいだろう。ちなみに、同じローデンストックでも標準ラインのシロナー(Sironar N)は214mmで開放はF5.6だから、単純に性能だけ見ればどちらが優れているかは議論の余地も無い。ただ、それだけ値段はお手ごろで、シロナー(Sironar N)の新品がUSD670~700ちょっとだったのに対して、こちらはいいところUSD350そこそこか、場合によってはUSD300を切ったと言うから、ほぼ半値かそれ以下で流通していたと観てよい。
興味深いのは、特にアメリカで自然風景をテーマに撮影する人々の間で評価が高かったことで、少々暗くてあおれなくても圧倒的に軽量小型で色ヌケが好い点が評価につながったのだろうが、あらためて写真環境の違いに驚かされる。ちなみに、このGeronarには210mmと300mmのバリエーションがあり、3本で一族を形成していたのだが、いずれもアメリカで評価が高く、それに対して日本ではめったにお目にかかれないところが共通している。
自分はイメージサークル重視ということもあり、少し使っただけで手放してしまったが、描写は非常に気に入っていただけに、今からすると少し惜しいことをしたような気もする。残念なことに、近年カタログから落ちてしまったこともあり、機会があったら手に入れておきたいレンズのひとつでもある。
エントリ公開後、ユーザから以下のような使用感をいただいた。
順光時の解像度は高く、コントラストも良好だが、迷光には極端に弱く、わずかな斜光線でもフレアが生じた。逆光時はフレアがひどくもやがかかったような状態となり、さらに開放ではハロも盛大に生じるため、ソフトフォーカスがかった描写(ライカレンズのズマールに類似)となっている。
順光で絞り込むことが前提となる風景写真では使えるかもしれないが、そのほかの用途にはあまりお勧めしないという評価である。
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テーマ:★カメラ&レンズ・機材 - ジャンル:写真
- 2008/01/10(木) 14:09:41|
- カメヲタ話
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